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ここで待ってるから。
第29章 ここで待ってるから。②
「…夏が私に追い付くのを、ちゃんとここで待ってるから。だから、夏。もう、離さないでね。」
風が深く繁った葉を鳴らす。
夏が私を抱き寄せ、痛いくらいに力を込める。
夏の鼓動と私の呼吸がシンクロする。
「…離しません。永遠に。」
夏と二人で家に帰ろう。
そこからはじめてみよう。
まだまだ、迷う事もある。まだまだ、譲れない事もある。
それでも、二人で一緒に。
いつだって、この囲まれた箱庭のような田舎から飛び立つことばかり考えていた。
大人になれば。
大人になれば、いつか皆の様に飛び立てると思っていた。
でも、それを諦めた人間はどうしたらいいのだろうか。
それなら、飛び立とうとする者の支えになればいい。
飛び立とうとする者の背中を押してやればいい。
それが、君への償いとなるなら進んで彼らの杖となろう。
杖は身体を支え、時に足になり、時に迷った道標となるだろう。
それが、君の望みなら。
私はこの地に根付き、地を這い、花を咲かせ、実をつけ永遠の輪廻を繰り返す。
ほら、迷った若者がそっと囁く。
心からの愛を。
心からの想いを。
君が望むことはなんでもしてあげる。
それが、自分の背負った罪。
この若者を導けば、自分の罪は軽くなるのだろうか。
いや、それよりも早く君に会いたい。
この地が生を縛り付けるなら、今にでも飛び上がり君のいる空へ死とともに舞い上がり消えてしまいたい。
君の側に行けるのなら、なんだってする。
君に会いたい。
「…まだ。駄目。」
君への想いで押し潰されそうだよ。
「大丈夫。」
会いたい。会いたいよ。
「…ちゃんと、ここで待ってるから。」
「そうか。」
それなら。
それなら、もう少しだけ見守ってみようか。
待っていて。
いつか、そこに行くときまで。
「うん。ここで待ってるからね。」
風が深く繁った葉を鳴らす。
夏が私を抱き寄せ、痛いくらいに力を込める。
夏の鼓動と私の呼吸がシンクロする。
「…離しません。永遠に。」
夏と二人で家に帰ろう。
そこからはじめてみよう。
まだまだ、迷う事もある。まだまだ、譲れない事もある。
それでも、二人で一緒に。
いつだって、この囲まれた箱庭のような田舎から飛び立つことばかり考えていた。
大人になれば。
大人になれば、いつか皆の様に飛び立てると思っていた。
でも、それを諦めた人間はどうしたらいいのだろうか。
それなら、飛び立とうとする者の支えになればいい。
飛び立とうとする者の背中を押してやればいい。
それが、君への償いとなるなら進んで彼らの杖となろう。
杖は身体を支え、時に足になり、時に迷った道標となるだろう。
それが、君の望みなら。
私はこの地に根付き、地を這い、花を咲かせ、実をつけ永遠の輪廻を繰り返す。
ほら、迷った若者がそっと囁く。
心からの愛を。
心からの想いを。
君が望むことはなんでもしてあげる。
それが、自分の背負った罪。
この若者を導けば、自分の罪は軽くなるのだろうか。
いや、それよりも早く君に会いたい。
この地が生を縛り付けるなら、今にでも飛び上がり君のいる空へ死とともに舞い上がり消えてしまいたい。
君の側に行けるのなら、なんだってする。
君に会いたい。
「…まだ。駄目。」
君への想いで押し潰されそうだよ。
「大丈夫。」
会いたい。会いたいよ。
「…ちゃんと、ここで待ってるから。」
「そうか。」
それなら。
それなら、もう少しだけ見守ってみようか。
待っていて。
いつか、そこに行くときまで。
「うん。ここで待ってるからね。」