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ここで待ってるから。
第4章 本当の気持ち。
〈夏の領分〉
小さい頃から親戚に囲まれて育った。イトコが総勢、九人いて一番下が俺だった。みんな同じ幼稚園に行き、小学校、中学校と通う。
高校は市内までバスで一時間。
大学はみんな、県外に行くのが当たり前。
沢山、イトコはいたけどいつも一緒にいたのは橙子さんだった。
自分が中学生になると、橙子さんは東京の大学に入り離れ離れになってしまった。
橙子さんを好きだと自覚したのは、高校三年になり一年に一度の正月に帰ってきた時だった。
橙子さんのおば夫婦は旅行に行ってしまったので、うちに泊まった日のこと。
夜日付が変わる頃、二人でコタツに入りみかん食べたりゴロゴロしたり。
『夏君、受験頑張ってね。』
橙子さんは何気に俺の頭に手を伸ばしてきた。
たったそれだけ。
今までだって、散々肩もぶつかり、コタツで足が触れていたのに。
頭を撫でられ、顔が沸騰する位真っ赤になる。
こんなに、大好きだったんだ。
大学生になり、自分もなかなか実家に寄り付かなくなりそれなりに彼女も出来た。
一人目は、髪の長い大人しい子だった。それなりに付き合えば身体の関係も生まれてくる。
いざ、エッチしようとしたけど、なかなか入らない。
その子も処女じゃなかったけど、結構無理やりな形のセックスに怒り、やったあと直ぐに別れた。
二人目は、タバコも酒もガンガン飲む子。
やっぱり、流れでセックスすると眉をひそめてストレートに言われた。
『夏のナニは、デカすぎ。』
この歳になるまで、そんな事知らないでいた。
それから、もう誰とも付き合わないようにしていた。
大学卒業して、就職難民になりずっと実家でゴロゴロしていたら、大学時代の先輩が東京の実家の出版社を受け継ぎ人出が欲しいと誘ってくれた。
正直、それまで橙子さんの事は忘れていた。
お袋と橙子さんのおばさんは、就職できた俺を喜んでくれたし、東京での生活に不安がないように橙子さんに俺を託した。
『ねえ、橙子さん。俺とエッチしない?』
久々に会った橙子さんを見て、閉じ込めていた想いが溢れ出た。
大好き。
素直に言えたらどんなに楽だろう。
でも、まだそれは言わない。
橙子さんの口から言わせないと、意味がない事だから。