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セルフヌード
第4章 光と闇


「なつみって有名だったんだ」

「意外そうな顔」

「どっちかと言えばモデル目指しそうだったもん」

「人を外見で判断しないで」

「とか言って。じゃあなつみは可愛くない女の子に声かけられたら付いていく?」

「今は、美優以外に興味ないかな」

「なつみが真面目になってるー」


 女から、からからと笑い声が上がった。

 児童養護施設の職員を務めているという彼女、りのは、最近までなつみと音信が途絶えていたという。

 再会したばかりというのに、まるでずっと一緒にいたような空気感が二人をとりまいていた。


「うそうそ、ごめん。真面目だったよね。なつみは、どうせ告っても玉砕するって有名だったし。ネットの噂はやっぱり嘘か」

「そういうこと」

「あ、そろそろ行かなくちゃ」

「連休までお仕事なんですか?」

「こういう仕事はプライベートもあってないようなものなんです。美優さん、なつみ。ありがと。またね、目の保養させてもらったわ」


 りのが人混みを立ち去った。

 美優はギャラリーを見回す。

 どこから沸いて出てくるのかと不思議になるほど、人の波は間断なかった。


「あのモデルが美優だって、誰も気づいてない」

「そうね」

「何で分かんないかなぁ」

「顔、写ってないもの」

「私は分かったよ」

「当てずっぽうじゃなかったの?」

「山勘ならあんなことしない」

「──……」


 芸術家は一つの対象から十も百もの本質が見澄ませるという。


 なつみの目が美優を見極められるだけの器量だったのかも知れないが、思い起こせば、なつみは無に等しい手掛かりだけを頼って、美優を見つけ出したのだ。
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