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セルフヌード
第4章 光と闇
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ゴールデンウィーク中、美優は二日間良の帰省に伴ったのを除いては、なつみの私宅と写真展を毎日のように行き来していた。
裏小路にひっそりとあるギャラリーは、日頃芸術に関心を示さなかろう類の客も出入りしていた。
中には慣れた調子でなつみに話し、美優にも愛想良く接するタイプの人間もいた。聞けば彼らはモデルや技術者、美術家など、主に業界関係者らしかった。
「お若いのに大したものねぇ。写真も個性的だし。お姉さんが綺麗だわ」
「貴女にも孫がいるじゃない」
「ウチはあんな格好してくれないの。あ、これじゃない?昨日評論を読んだわ。明暗法の巧手の挑戦、光の花嫁。あら本当……まぁ、どうなっているのかしら。ここが、この光を受けて……反射に反射を重ねてあるのかしら。素人なら白飛びするでしょうに、よくもここまで、まぁ」
「嶋入さんは、テネブリスムにとどまらなくて正解だったわね。絵画における元祖にしたって、ルネサンスの後世のマニエリスムはマンネリの語源というじゃない。それに引き替え、写真集があれだけ評判なら普通はメインにああいうのを持ってくるのに、潔い見切りようね」
「それは評論家の人達も、下手なこと言えなくなるわね」…………
小花の壁紙の半個室から、老婦人達が去っていった。
一区手前にいた客達が、今また撮り下ろしのポートレートの前に流れ込む。
しめやかに沸き立つ溜め息、論評。
遠目になつみを見る彼女らを後目に、今は美優ともう一人、美しい写真家に馴れ親しんだ女性がいた。