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セルフヌード
第5章 少女と被虐







 十日以上も離れていた恋人は、奇跡のような存在感で、美優の視界に現れた。


 長い茶髪を飾った大きなリボンに、美優であれば袖を通すのも憚られるようなフリルやレースたっぷりの洋服──…ファッション業界に携わってさえいなければ、仕事帰りとは思い難い格好だ。


 美優も、専業主婦とは見え難かろう格好で、門の前に待ち伏せていた。



 悩んでいたなど言い訳だった。



 なつみが美優を長い眠りから起こしてくれた。美優に、女として生まれた感動を教えた。





「美優……?」


 幻にでもまみえたみたいな双眸が、美優を認めた。


 美優はなつみに駆け寄って、不可抗の力に絡め取られるようにして腕を回す。


 部活帰りの荷物を背負った学生達が、二人の側を通り過ぎてゆく。



 美優は、分別を弁えない若者達同様、恋人に振り払われることを怖れて、尚更、腕を強めた。



「……美優、ほっぺ、腫れてる」


「なん、で……何でぇ……」


「……ごめん、……」


「──……」


「治ってないんだ。……っていうか、……」



 美優は首を横に振る。

 駄々をこねる子供のように、華奢な身体にしがみついて離れない。



 総子は、十日かかってなつみから聞き出したと言った。

 美優が確かめられなかったこと。
 あの夜、何が起きていたのか。


「私なんか、大勢いるなつみのファンに過ぎないのに……何で……」

「──……」



 美優の耳を、なつみの呆れた苦笑が撫でた。
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