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セルフヌード
第5章 少女と被虐
「…………それから、広栄さんやお父さんの知り合いの、水商売をしている女の人達に抱かれたの。名前とかいちいち訊かないし、覚えてたってキリがないけど。──……。そういうことだから、お母さんが生きてるっていうのは、違うの。この間もお墓の前で広栄さんに謝って……髪、切ったのストーカーじゃないんだ。……ちょっとは、美優に一途だったって、分かってくれた?」
「──……」
美優はビジネスホテルにいた。
寝台に腰かけて、ウエストをなつみの腕に預け、片手をたわやかな指に絡めていた。
美しい声が美優に聞かせた昔話は、美しい女に相応からぬ惨劇だった。
「私……何も知らなくて……」
美優は、なつみの背中に腕を回す。
もう随分と感じていなかった感覚だ。ほんの少し温度の低い、薄い肉叢の覆ったなつみの質感は、強く強く抱きたいのに、求める気持ちに任せると、消えてしまいそうに儚い。
「こら、美優ー。ただでさえネガティブなんだから、そんな顔しない。ごめんね、ソフトなイジメに濡れちゃう美優に、ドン引き確定な話なんかして。つまり美優だけってこと。名前も知らずにヤッた相手なんて、ヤッた内に入んないし」
「…………」
「ほっぺ、すぐ冷やして良かった。明日には食べちゃいたいほど可愛い美優に戻ってるよ。総子さんに怒っとくね。あの人家まで行ったんでしょ?ライターが市民のプライバシーを侵すなんて、終わってるねー」
美優の頰を包んだ手が、離れていった。
暢気に笑う横顔は、何不自由なくぬくぬくと暮らし、万人を顎で使って手玉にとる、美優が美人という存在に最近までいだいてきた通りの感じがある。
なつみは世界を美しいと言った。心から、美しいと信じている。
実際、その目が暴く、その手が写す、世界の色は想像を絶する。…………