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セルフヌード
第5章 少女と被虐







「はるこ……今、なんて……」



 街の喧騒などものともしない、しめやかな時の流れに紙の匂いが染み込む空間。


 美優は友人の勤める書店にいた。


 白いカッターシャツに黒いズボン。従業員に指定されたエプロンをつけた友人は、相も変わらずてきぱきと仕事の手を動かしていた。

 美優が声をかけるほんの数秒前までは。


「嶋入さんと、どういう関係?」

「ご近所さん……」

「みーこが彼女とホテルを出るの、見かけたの」

「──……」

「私、今日早出でね。見るつもりなかったけど、……キス、してたよね?」

「…………」



 ビジネスホテルは大通りの外れにあった。

 美優は細心の注意を払って、なつみと影を一つにしたはずだ。

 恋と認めたばかりの恋。いくら燃え上がっていても、分別はつけて行動していた。

 だのに、よりによってはるこに見つかろうとは。


「あのね、これには事情が」

「本気にされてると思ってるの?」

「え、……」

「相手は嶋入さんだよ。私、……写真展の影響で、彼女のこと調べたの。手、出されてるモデル結構いるんでしょ」


 はるこの顔は真剣だ。

 堅気で、正直者で、同じ高校にいた頃から変わらない。
 美優が信頼出来る友人でいてくれるのと同時に、ものを見る目は冷静だ。
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