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セルフヌード
第5章 少女と被虐
「──……」
「まさか……みーこ寝た?」
「……はるこに、何が分かるの」
「何って……」
「なつみのこと、そんな風に言わないで」
「良先輩は知ってるの?ってか、みーこ何か隠してない?この間からおかしいと思った。みーこは結婚してるんだよ。良先輩、みーこのことだけ考えてるんだよ?十何年、みーこのこと──」
「結婚してたら、……自由にしちゃいけないの?」
「…………」
「独身ってそんなに偉いの?後に出逢った人に惹かれちゃダメなの?お洒落もおかしいの?……私は良くんのこと好きだよ。私のこと愛してくれて、あんなに良い人いなかった。私が、あのままでも十分幸せになれるよう、私のことたくさん認めてくれた人だよ。でも、……」
良が美優に与えたものは、いつでも鍵の外せる鳥籠だ。望むだけのぬくもりと、望むだけの餌が与えられる。
美優を何不自由なくとりこめる愛は、美優から、選択する勇気を奪っていた。
良と一緒にいて劣等感は覚えなかった。洋服も、却って美優が目立たないようにしていた方が、良も心地好いところがあったはずだ。
張り合いのない日々。
良は美優が何もしなくても、美優を褒めた。美優が後ろ向きであっても、けなさなかった。美優をくるんでいた殻は、強度を増した。
兄のような愛こそあった。
心ときめく恋人の愛が、彼にはなかった。
「そんな子だって……思わなかった」
「──……」
「帰って。私、仕事しに来てるから。無駄話に来るの、やめてくれない?」
料理本の一角に、一人、取り残された。
一人になりたくない。なつみにメールを送ったところで、今頃まだ撮影だ。
美優は、平置きの中から、可愛らしい表紙にくるまれたデコレーションカップケーキの本を拾い上げた。