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セルフヌード
第5章 少女と被虐
「男性を撮るのは不得手なんです」
「私は好きよ。今度のニュースは話題になる。なつみの写真が私の記事を飾ってくれれば、より注目度も増す。ライターとしての私にも、こだわりがあるの。カメラマンも自分で選んで、納得のいく記事を出したい」
「ヨーロッパのどこでしたっけ。来月だと仕事も何個か決まっちゃってますし、美優も何て言うか……」
総子がなつみに声をかけた魂胆は、見え透いていた。
叔母の性的虐待と、通常に比べ治癒力の劣った身体。
大方、総子はなつみが環境を変えれば頭を冷やすとでも考えているのだ。
「その政治家、誰なんですか?」
「一応、秘密裏なの。教えた時点で、承諾と受け取るけど」
「──……」
「あっ」
突然、総子の腕から白いものが飛び出した。
ともすればぬいぐるみに見まがっていた、たった今まで総子の膝に落ち着いていた猫が、珍しい外の世界に解き放たれた子供よろしく広いリビングを駆ける。
「メイ、待ちなさいっ……メイ!」
メイと呼ばれた白猫が、チェストに登った。
毛長の脚が、フォトフレームや陶器の人形、アクセサリースタンドを蹴散らす。
「メイ!ダメじゃないの、……。ごめん、なつみ。抱いてて」
「いえ、片づけるので、総子さんは座っ──」
無惨にひっくり返ったフローリングに屈んだ瞬間、血の気がひいた。
「…………」
白い箱。蔦で編んだようなシェルの装飾が施してある小さな箱は、母の遺品だ。
蓋が、開いていた。