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セルフヌード
第2章 美しさという暴力
明日の洋服を選んでいた時、インターホンのチャイムが鳴った。
酷い悪寒に身が引き攣った。追考して安堵する。
──こうした礼節を備えているなら、あの人ではない。
訪問者は慕わしげになつみを呼んだ。主人にありつけた愛玩動物の仕草でじゃれついた。
人間に備わる習慣的行動が、軒先での抱擁を交わした二人の女を、閨房へ滑り込ませた。
頰骨に支えきれているのが不思議なまでに大きな目に、小さな鼻先──…女は、ペットショップのウサギが人間に化けて出てきたごときの風采だ。
なつみはキスを交わしながら、女の黒髪を縛っていたヘアゴムをとく。ツインテールが崩れると、化けウサギの息差しは消えた。
「ぁっ、はぁ、なつみさん。っ、んんっ……」
華奢な身体を触りながら、女をシーツに突き倒す。そこで久しく女の名前を思い出す。
鹿山ひとみ(かやまひとみ)。
大学生だ。否、それは四年前の話だ。今は、社会人か何かのはずだ。
「どうしたの?ウサギさん。用件は?」
「なつみさんに……っ、会いたくて……」
「それだけ?」
意図して低く発声しても、男のような音階にまでは決して落ちない。
媚薬は、ほんの少し喉の力を緩めた溜め息。これで大抵の女は堕ちる。生半可に堕とすだけでは色消しだ。喉を舐めてやりながら、心房を閉ざす膨らみをほぐす。手持ち無沙汰に指先を撫でる。
「はぁっ……ぃぇ、……っっ」
ひとみの息が収斂する。期待にぎらつく眼球の端を唇で触れて、なつみはひとみの衣服を引き剥がしてゆく。