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セルフヌード
第8章 *最終章*セルフヌード
集中治療室を出た翌朝、総子はなつみの泣き腫らした顔をからかい、そして問うたという。
…──貴女を庇って私が死んだと聞かされて、泣くほどの気持ちになったでしょう?
それから総子は、なつみの安堵を指摘した。
…──美優さんに、なつみならどちらの気持ちを味わわせたい?
総子が生死を彷徨ったのは事実だ。
意識も切れ切れの最中(さなか)、彼女は医者になつみを騙すよう頼んだ。医者も驚いていたらしい。
今や教え子ではない、まして家族や恋人でもないなつみのために、迷わず身を投げ出した。総子は、仮に助からなくても幸せだったとなつみに話した。
こんなに愛されてる人を守れたなら。私は死ぬ瞬間まで芸術家であり続ける。だからなつみの写真を待つ皆さんに、私はなすべきことをしただけ。
「何で……連絡くれなかったの。私だって、もう会えないって……」
「寂しかった?」
「そんなんじゃ済まないよっ……」
美優の光はなつみだけだ。彼女のいない世界など、憎しみの対象でしかなかった。
こんなにも美しい人を見捨てた世界。
美優に生き地獄を与えただけの。
そして美優は最愛の人を愛しきれなかった自分を苛み、生きながらに業火に炙られ、呻吟していた。