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セルフヌード
第8章 *最終章*セルフヌード







 美優はマンションの一室にいた。


 繁華街から二筋離れた立地らしからぬ、静かな部屋だ。


 小花柄のカーテンに、薄茶の家具、雑貨や電化製品は必要最低限見当たる程度だ。


 二年前と変わらない、華やかな彼女が暮らしているには飾り気ない。



「よく眠ってる。美優も私も静かに話さなくちゃ、お嬢様、良くんにしゃべるかも」

「はは、まだ言葉覚えてないよ」


 咲希の眠る寝具を離れて、なつみが美優の口づけていたのと同じデザインのティーカップを持ち上げた。

 遠くで花のフレーバーが香るアッサムティーは、優しいミルクがとけていた。


「ここ半年はさんざんだったな。帰ってきたら、私が死んだことになってるんだもん。美人薄命の伝説も、ここまで鵜呑みになってると嫌がらせ」

「だって……人気写真家って、……」


 あんな速報記事を読めば、誰でもなつみに結びつく。

 冷静になれば総子も当てはまったろうが、何分、あの頃のなつみは危うかった。


「ま、お医者さんが空気を読まなかった所為か。結局、総子さんの悪ふざけは私が慌てて始末する羽目になったし。……訂正が追いつかなかったから誤報に尾ひれがついたんだけど」

「──……」
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