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セルフヌード
第8章 *最終章*セルフヌード
美優を何より優先する恋人は、シャワーを美優に浴びせ始めた。
美優は手のひらに湯を掬って、なつみに浴びせる。
「お湯、熱くない?」
「うん、……」
一つのスポンジで二つの肢体を洗い直して、美優はぎこちない恋人の唇をキスで塞いだ。
美しい。
顔だけではない。心魂だけでも。
なつみの身体は、間違いなく美優を恍惚とさせる。これ以上は薄れないという傷は、並外れて無雑な精神に紐づいている。
寝具に入ってじゃれ合いながら、なつみは美優に写真集にまつわる話の続きをした。
稲田総子の最後の人物被写体。
最愛の女に久遠の愛を届けたがった謎のモデルは、あの撮影を機に表層だけの美を繕うことをやめたのだという。
美しい顔。華やかな洋服。きらびやかな立ち振る舞い──…。
数多の人間を惹きつけ、数多の女を手篭めにした。だが、そこに真実はなかった。
セルフヌード。
美優も、醜い女という表層や、家庭という鳥籠から抜け出したかったのかも知れない。