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セルフヌード
第8章 *最終章*セルフヌード
昔、良が話していた。
綺麗とは、生まれたままのかたちであること。顔かたちや、まして矯正してつくり上げるものではない、と。
なつみは世界を愛していた。
母親の暗示にかかって、どうしようもない世界をありのままに美しいと信じ込んでいた。
どうしようもない世界をありのままに美しいと信じ込んでいた彼女は、美しかった。
彼女の言葉を信じた美優は、少なくともコンプレックスのはずの姿が写真に撮られる喜びに顫えた。
美しくさえ生まれていたら、変わっていた。
美しくさえあったなら──……。
違った。変わりさえすれば美しくなれたのだ。
今更隠すものなどどこにもない、腕を伸ばして、美優はなつみを枕に誘う。
「姫系着て笑われたら、慰めてくれる?」
「笑ったやつ全員、殴り飛ばしてあげる」
指先にキスを感じて抱き合って、夜風に体温をさらわれた腕をさすられながら、美優はまた、キスを求める。
当たり前の幸福が、続いてゆく。
めくるめく夜が巡る世界は、いつでも光を抱いていた。
第8章 セルフヌード─完─