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セルフヌード
第2章 美しさという暴力
良の手が、美優のせっかくセットした髪をぞんざいに撫でた。
「はるちゃんになりたいな」
「何言ってるの」
「うん、合格。美優は可愛いんだ。いつもだってこれくらいお洒落しなくちゃ。俺のことは忘れて、楽しんでこい」
「…………」
頭から良の重みが消えた。
美優はひとときの別れも惜しい男を見上げる。
抱き締めて。行ってきます、の、抱擁をして。
窓は閉めきっている。外気の入り込める隙はないのに、春の匂いを連れた風が、美優の声を借りなかった想いを乗せて、良の耳へそよいでいった。
「──……」
良の腕がほどけていった。
どうか美優の跼蹐まで、伝わらなかったことを願う。