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食べてしまいたい
第2章 刺激のない日常


優しい触り方。
すーっと透き通るような軽やかな動き。

ある意味、気持ちが良かった。


「はる姐、慣れてるね」

「そりゃね!昔、メイクアップアーティスト目指してたから腕には自信あるわよ!」

へー…どこまでが本物なのかな。
ちょっとだけワクワクして待っててあげる。

「ほっぺた上げて」

「えー…」

「えーじゃない!さっさと笑って!」

ニヤニヤ。
可愛くもない笑顔。そして、とてつもない威圧感。

「引き攣るなんてありえないわ~。かわいい笑い方知らないの?あたしみたいな」

「随分自分が一番ですねぇ…」

あたしは、そのことは普通に冗談だって思っていた。でも彼は結構本気の答えだった。


「笑えないなんて、人間として嫌よ」


なぜだか、心が軋む音がした。


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