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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
 もちろん、道行く人々は二人を見ては愕いたように立ち止まり、ひそひそと何やら囁いていたのは当然といえば当然だ。中には
「若い人は良いねぇ」
「美男美女で羨ましい」
「あの男はそうとうあの娘にイカレちまってるな」
 などと、好き放題な科白を聞こえよがしに言う者もいて、その度に薫子は身も世もない想いで承平の腕の中で縮こまっていた。
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