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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
 薫子にとっては、いつしか市井のあの家こそが我が家になっていたのだ。
 酔芙蓉は初夏から秋口にかけて咲く夏の花だ。大輪の八重の花は大ぶりで、華やかに見えるから、その樹は貴族たちにも愛されて庭に植えられることが多い。朝には淡紅色であるのに、一日かけて花の色が濃さを増して夕方には濃いピンク色に染まる。その様が酒に酔ったようなので、〝酔芙蓉〟と名付けられたという。
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