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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
 乳母は不幸な火事で良人と生まれたばかりの子を失ったばかりで、乳が豊かに出て難儀していたところを薫子の乳母として雇われた。もちろん、公卿の屋敷に雇われるほどゆえ、氏素性は確かな女である。
 乳母は蒸し饅頭屋を営み市井の片隅に小さな家を借り、そこで薫子を育ててくれた。苦労し通しなのが祟ったのか、その乳母も屋敷を出て二年後に逝った。
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