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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
 薫子はもう近江の言葉を聞いていなかった。袿の裾を蹴立てるように姉の部屋に急いだ。
「姉上!」
呼びながら御簾を跳ね上げて室に入ると、姉は近江の言葉どおり、夜具に横たわっていた。
「姉上、薫子です」
 枕辺に座ると、姉の奏子(かなこ)がうっすらと眼を開いた。
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