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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
「何故? 好きだったのでしょう」
 姉の不思議そうな顔に、薫子は淋しげな笑みで応えた。
「そのときは私も庶民の娘のなりをしていましたし、第一、橘氏の娘とはいえ、私と姉上では立場が違います。高位の公家が側室の娘を望んで妻に迎えたがるはずはありませんよ」
「薫子」
 姉の顔が哀しげに歪んだ。
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