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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
 あの事故の直後、小間物屋の声がかりで現場にいた男たちが昏倒している男を戸板に乗せて家まで運んでくれた。すぐに町医者が呼ばれ、男を診たのだが―、やはり薫子の予感は当たっていた。
―頭を相当強く打っておるな。中に血の塊ができてなければ良いのだが、もし、できておったら、生命は十中八九なかろう。もし、身寄りが判れば、今の中に知らせてやった方が良い。
 医者は沈痛な表情で告げていった。できることは何もないと気の毒そうにも言った。
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