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第3章 噂の姫君

　こんなときでも、一度も琵琶湖を見たことのない薫子を思いやってくれる姉の優しさが少し切なかった。紫陽花を見つめる姉の瞳ははるかに遠い。まるで紫陽花ではなく、何か別のものを見ているかのようだ。
　元々色白なのに、今はすっすり血の気を失ってしまい、白いのを通り越して蒼褪めている。そのやつれた横顔にはくっきりと病魔にむしばまれている跡が刻み込まれている。