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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
 優しい姉がこのままどこかに行ってしまうような気がして、薫子はつい強い口調で姉を呼んだ。
「姉上! あまり立っていて、お疲れになってはいけません。そろそろ床にお戻りになられなくては」
「もう少しだけ、こに居させてちょうだい」
 普段、人に逆らうことのない姉の珍しい言葉に、薫子は戸惑いながらも頷いた。今は姉の気の済むようにさせてあげたい。
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