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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第4章 入内の勅命
「薫子、多分、そなたの言うことは正しい。誰も薫子の心を縛ることはできないものな」
承平がどこか沈んだ口調で言った。彼はしばらく物想いに耽っているようだった。
また、沈黙。以前は十数日もの間、一つ屋根の下に起居したのに、こんなことはなかった。和気藹々とまるで気の置けない友人か兄妹のように愉しい日々を過ごせたのに。やはり、〝一緒に来てくれ〟という彼の頼みを振り切ったあの日から、二人の間には埋められない溝ができてしまったのだろうか。