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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
「何故、そんな哀しいことを言うの? あなたにも待ってくれている家族がいるでしょうに」
 彼の眼が遠くなった。
「そんな者はこの世のどこを探してもいない」
 そこで彼が頭を押さえ、ツと小さく呻いた。
「ごめんなさいね。意識を取り戻したばかりなのに、難しい話は無理よね」
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