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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第5章 真実と恋心
「大納言橘諸綱、ただ今、参上仕りました」
 諸綱も殿上用の正装姿で現れ、恭しく一礼し、その場に端座した。再度帝が顎をしゃくると、今度は蔵人も静かに退出していった。
 これで、この場は諸綱と帝の二人だけになったわけだ。帝はサッと扇を広げると、口許を隠し囁いた。
「薫子はいかがしておる」
「熱がどうにもなかなか下がりませぬ」
「皇室秘蔵の唐渡りの薬も効かぬのか?」
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