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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第5章 真実と恋心
そんな大けがをしてまで、芝居を打つだけの意味はない。彼自身も自分の帝という立場は重いものであり、けして我が身一人の生命ではないと自覚はしていたろう。
 まさか帝の御名の〝承平(つぐひら)〟が〝承平(しようへい)〟だとは考えだにしなかった。
 承平は溜息をついた。
「ただ、二度目にそなたの前に現れたときは意図したものだった。薫子が橘氏の姫だと知っていた」
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