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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
「本当に商売あがったりだわね。今日のところはもう、店じまいした方が良いのかしら」
 呟くともなしに呟いた。これでも、薫子の店の蒸し饅頭は美味いと都でも評判の名物なのである。時々は貴族の家人(けにん)が主人に命じられて買いにきたというほどで、庶民だけでなく公卿の中にもわざわざ買い求める客がいるほどだ。
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