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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第9章 小平太という男
 薫子が想いに耽っていたときだ、眼前に人影が立った。愕いて顔を上げると、痩せぎすの人相の悪い男が立っていた。着ているものは洗いざらしではあるが、こざっぱりしている。中肉中背、特にこれといった特徴もない男だが、眼が据わっているのが男の荒んだ暮らしぶりや性格を物語っているようだ。
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