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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第9章 小平太という男
「いらっしゃい」
 それでも愛想よく声をかけると、男が何かを放って寄越す。彼女の前には竈が居座り、その上に大きな竹籠が鎮座している。男の投げたそれは薫子が商売に使う大切なその蒸籠(せいろう)を掠めて転がってきた。
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