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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
 薫子が小間物屋を軽く睨んだ。
「おじさん、それって、私に恋人がいないのを知っていて、わざと言ってる?」
 小間物屋は慌てて首を振る。
「まさか、嫌みじゃないよ。でも、薫子ちゃんももう十六だろ? そろそろ身を固めても良い頃合いじゃないかと思っただけだよ」
 薫子は溜息をついた。
「おじさんまで父上―じゃなくて、他の誰かと同じことを言わないでよね」
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