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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
 薫子の父親ほどの小間物屋は小柄で風采の上がらない中年だけれど、薫子を何かと気遣ってくれる人の好い男だ。何でも若い頃に都に流行った疫病で妻と娘を一度に失ったと聞いている。男からしたら、跳ねっ返りで多少向こう見ずな薫子が亡くした娘のように見えるのだろう。
「まあ、確かに桜の見頃はあっという間に終わるからな。薫ちゃんも誰か良い男と花見に行ってくると良いさ」
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