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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
「幾ら綺麗でも、あの簪に金塊と引き替えるだけの値打ちはないわよ」
「そうなのか? 市井に出るときにはこれで銭の代わりになると聞いていたが」
「もう! どれだけ大貴族の箱入り息子なのよ? お金の使い方も知らないなんて」
 薫子はとにかくその物騒な―誰かに見られたら盗まれそうな―代物を承平に懐に戻させた。
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