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俺の隣にいればいい
第1章 偶然とはいえ…
式部の目は真剣だ。
怒っても呆れてもいない。
「うん、大丈夫。何かあったらアキに直ぐ連絡するからさ」
「何かあってからじゃ遅いんだよ。もう少し部屋のランク上げたって余裕だろ。早く次の物件探せ」
ただの作家と編集者ではない二人は、友人同士でもある。互いに仕事から離れた話になると門倉を『ヘイ』式部を『アキ』と親しみを込めて呼んでいた。
「…………何ならウチに来たっていいんだからな」
「心配性だなぁ、そこまで迷惑かけられないよ。大丈夫だって。ほら、もう戻らないといけない時間じゃない?今日は本当に心配かけて、ごめん!」
手を顔の前で合わせ、ごめんなさいのポーズをつくる門倉を見て、式部は諦めたように溜め息を吐きながら立ち上がった。
門倉は触れて欲しくない話を続けていると、自分からさっさと話題を切り上げてしまう。
こうなると聞く耳を持たないので、何も言えなくなってしまうのだ。
「今度、様子見も兼ねてお前ン家行くから。部屋キレイにしておけよ」
門倉の頭をぐしゃぐしゃと撫で回すと伝票を持ち去って行く。
「了解、気をつけてね」
式部の背中に手を振りながら、その姿が見えなくなるまで見送った門倉は一目散にトイレへ駆け込んだ。
いつバレるかと
ずっと、ヒヤヒヤしていた。
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