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私は犬
第19章 任務遂行致します
このお魚、どうして焦げちゃうんだろ…。焦がさないで焼ける人がいるなら秘訣を教えて欲しい。情報提供料ならお支払いするわよ。

目の前の真っ黒な、焼き魚になる予定だった物をジッと見つめながらそう思う。これ、鰆の西京焼きだったわよね…。しぶしぶお箸で突っついていると、背後から

「ただいま。」

と声がした。

「ひゃああああっ!」

びっくりした。びっくりした。びっくりし過ぎてお箸投げちゃったじゃないっ!

「どうしてココへ帰って来るのよっ!」

本当に、すぐ隣なんだから、そっちに帰りなさいよっ。まったく…。

「だーかーら。帰れないんだってば!分かれよ。」

まだシャワー直らないのかしら?大変ね。

「俺の飯は?」

また、ご飯の話題出してくるし。信じられないっ。睨んでやるっ!そう固く決意して、じっと睨むと

「じ、自分でやる…。」

と言いながらキッチンへと消えて行った。ちょっと寂しそうだったけれども、お顔が赤かったけれども、そんなのどうでもいい。これって私の勝ちよね?やったわ…。勝ったっ!

勝利の余韻にジーンと浸りながら食卓を見ると、ある筈のおかずが1品消えていた…。

あぁぁっ?私の黒いお魚、何処に消えたのっ?落とした?お皿ごと?どこに?

テーブルの下に潜って探すも見当たらない。無い…。何処にも無い…。どうしよう…。消えちゃった!これって夢かしら?そう呆気にとられていると、

「……。ご飯はちゃんと座って食べなさい。」

と声がして、脇の下を抱えられて、椅子に強制着座させられた。私はお魚を探していただけなのに…。仕方ない、無くてもいいわ。さっさと食べちゃおう。

そう気を取り直して前を見ると、焦げていないお魚があった。しかもお皿に乗ってる…。ちゃんと鰆の西京焼きだ。凄い、なにこれ?

夢だけど?夢じゃなかった?
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