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私は犬
第23章 私の事情
スイスワインは美味しいと思うの。赤も白も、いいかんじ。レマン湖の北には葡萄畑がたくさんあって、まるで日本の茶畑みたいな風景が広がっている。ローザンヌの隣のラヴォー地区は、葡萄畑が世界遺産にもなっている。

日本で滅多に買えないのは、生産量が規制されているのと、みんなスイスで飲んじゃうから。足りないから、近隣諸国から輸入までしてる。おば様なんて、お気に入りの生産所から直買いしているの。

そのワインに、チーズの中でも柔らかいやつ、今の季節ならモッツァレラとか。これにカツを節とお醤油かけて…。これ、合うと思うのよね。チョコも合うと思う。んまいっ!

「お前、何飲んでんの?」

「普通の白ワイン。ファンダン・デュ・ヴァレー。」

「チョコ食いながら?」

いいじゃん…。チョコ美味しいんだから。そういう有史さんは、また、例のいいちこでしょ。透明だからすぐ分かった。

「このDVD何?」

「オペラ。セビリヤの理髪師。喜劇よ。有名なフィガロの結婚の、前作品、というか姉妹作。ぷっ!今の見た?変なのっ!2幕からがすっごく面白いの。」

こうして、まったり過ごすのも、悪く無いわね。どうでもいいけど、伯爵の変装が可笑しすぎるっ!

そう言えば、有史さんの好きなものは何かしら?いいちこ以外、全然知らないわ…。
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