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私は犬
第6章 お仕事です
向かった化粧室の鏡の前には、既に先客が二人いらして。何だか、とても楽しそうにお話していらっしゃる。

そこに割り込むのも躊躇われて、仕方なく。すごすごと引き返しながら通路の隅で髪を1つにまとめた。適当に。

総務課って何ていうか。とても慌ただしくて、皆さんとても仲良しな部所なのね。



席に戻るとまた渡辺さんに呼ばれた。

「九宝さん。あなたそのメイク、何とかなんないの?気持ち悪い。」

近藤さんに教えて頂いた、このお化粧のどこがどういう風に気持ち悪いのか、さっぱりわからないけれど、

「申し訳ございません。」と、頭を下げた。

渡辺さんはご機嫌がとても悪いみたい。どうしてかしら?

教えて頂きたい事はたくさんあるのだけれど、今は止めておいた方が良さそうね。困ったわ。こういう時は何て言えばいいのかしら?


「ねぇ、あなた大卒よね?大学どこ出たの?」


そう聞かれてこの間まで通っていた日本の大学での出来事を思い出し、戸惑ってしまう。

あの時も偶然隣あわせた方に同じ質問を受けて、オックスフォードですと答えたとたんに「すげぇ」と言われ、その後はなぜかこう…。微妙に避けられるようになってしまった。
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