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私は犬
第30章 主導権*
「…九宝さん、何でも一生懸命だったから。渡辺さん達にあんな事されても負けなかったから。そういう所が偉いと思ってた。渡辺さんに目を付けられて、3ヶ月も持った人は多くないよ。」

そうだったんだ。今までも私みたいな人が沢山いたのかな?

「他にもいらしたんですか?」

「うん。早い人は1週間で辞めてった。何とかしたくても、渡辺さん、副社長の息が濃かったから、山脇課長もお手上げだったと思う。山脇課長、副社長と同じ学閥だから。」

へー。社内にも派閥があるのか…。面倒くさいね。

「あのまま2度と会えないと思ってた。だから復職したって聞いた時は、本当に驚いたんだ。あの頃、力になれなくてごめんね。」

何で神部君が謝るのだろう?ああなったのは、渡辺さんに太刀打ち出来なかった、私の責任なのに。

「謝らないでください。もう済んだ事です。」

そう告げると、神部君は小さく笑った。何だろう…。神部君って笑うとちょっと可愛い…。

「元気な九宝さん見て、安心したー。またご飯行こうよ。美味しい店探しておくから。何が好き?」

神部君は、ずっと私を心配してくれていたんだ。だから励ますために飴をくれたんだ…。小林さんが言ってた通り、いい奴なんだ…。

「飴。ありがとう。ずっとお礼を言わずにいて、ごめんなさい。」
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