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私は犬
第31章 私の事情②
「これはこれは九宝さん。お珍しい。隣の女性は?」

「是枝会長、ご無沙汰しております。本日はお招きに預かりまして…。こちら私の友人で、高司さんです。」

「ほぅ…。あの高司家の…?」


是枝会長とやらは、じろりと私を品定めした。こういうの大嫌い…。

「お初に御目にかかります。高司真子と申します。」

適当に微笑みながら、偉そうに挨拶を返す。後は孝徳さんの隣で、2人の会話を黙って聞きながら、なるべくお上品に見えるように立っていればいい。

ほら始まった。見ない顔だけど日本に居なかったのか?とか、血縁か?とか、親しい友人なのか?とか。こういう質問してくる方は、大抵お嬢さんや孫娘さんをお持ちで、こっそり孝徳さんとの婚姻を目論んでいたりする。

留学を終えて帰国したばかりだと。孝徳さんがいつもの返事をすると、是枝会長は、こちらを見ながら興味深そうに頷いた。

高司家はおば様のご実家。お婆さまも旧姓が高司だから、正解じゃないけど間違いでもない。

長い挨拶が終わって、会場内を歩きだすと、視線が痛い…。主に女性。偉そうに歩かないといけないから、裾の長いドレスに隠れるヒールの低い靴で本当に良かった…。

このスケスケドレスは、裾周りと膝上に豪華なレース刺繍が施されていて、靴なんて見えないの。
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