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私は犬
第32章 我慢の限界*
おば様とご一緒する時は、ファーストやスイートを利用させて頂いているけれど。

自分に、ファーストクラスを利用できるだけの嗜みが身に付いているとは、とても思えないの。だから、ごめんね。剛ちゃん…。

でも、この、スイスインターナショナル航空のビジネス。シートが180度倒れるから寝やすいでしょ?私も旅行用の枕に空気を入れて、剛ちゃんみたいに寝ちゃおうっと。

目を覚ますと機内の照明はすっかり落ちていて、シャンペンをお代わりして、睡眠薬を飲んだ剛ちゃんは、口をあけて寝ていた…。『睡眠薬、私にも頂戴』と言ったら『あんたは駄目っ!』って言ってくれなかった。昔はいつも分けてくれたのに…。どうして急に意地悪になったんだろう?

目が冴えてしまった気がする…。剛ちゃんばっかり寝れてずるい…。今どの辺りを飛んでいるのだろう?そう思ってタッチパネルで飛行状況を確認すると、ロシア上空らしい。後5時間、何をして過ごそう…。

自分の持ち込んだヘッドフォンを外して耳栓を抜くと、剛ちゃんのイビキがカーカーと聞こえてきた…。これ、凄い迷惑よね…。慌てて周りを確認すると、皆さんそれなりに寝ているみたいで少し安心した。
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