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私は犬
第33章 さよなら
「真子さん、湯井さんが来るお時間です。応接室へお願いしますね。」
ああ…。もう11時だ。時間が経つのが早すぎる。今日は、遅刻したから時間が足りない。
「はい。ちょっと、5分だけ待って頂いて下さい…。」
そんな要望は通らず、春木さんに、書類ごと応接室へ運ばれると、湯井さんとアシスタントさん達が、ネイルの準備を整えて待ち構えていた。
足をフットバスに浸して、指先を左右のハンドバスに浸す。春木さんがマンハセットの譜面台に書類を置いてめくってくれた。
「真子さん、突然で申し訳ないんですけど、私、今日で最後なんですよ。長い間担当させて頂いて有り難うございました。」
湯井さんが突然そんな事を口にするから、びっくりしてしまった。
「どうされたの?」
「結婚して、彼の地元で暮らす事になりました。本当、急で申し訳ないんですけど…。」
湯井さんは、悲しそうに事情を教えてくれた。東京で知り合った彼が、家業の美容系の問屋を継ぐために、地元に戻るのだとか。プロポーズされて付いて行く事に決めたのだそうだ。
「本当は、ずっと東京に居たいんですけど、彼のお父さんが身体を壊されて。何かあってからじゃ遅いから。」
ああ…。もう11時だ。時間が経つのが早すぎる。今日は、遅刻したから時間が足りない。
「はい。ちょっと、5分だけ待って頂いて下さい…。」
そんな要望は通らず、春木さんに、書類ごと応接室へ運ばれると、湯井さんとアシスタントさん達が、ネイルの準備を整えて待ち構えていた。
足をフットバスに浸して、指先を左右のハンドバスに浸す。春木さんがマンハセットの譜面台に書類を置いてめくってくれた。
「真子さん、突然で申し訳ないんですけど、私、今日で最後なんですよ。長い間担当させて頂いて有り難うございました。」
湯井さんが突然そんな事を口にするから、びっくりしてしまった。
「どうされたの?」
「結婚して、彼の地元で暮らす事になりました。本当、急で申し訳ないんですけど…。」
湯井さんは、悲しそうに事情を教えてくれた。東京で知り合った彼が、家業の美容系の問屋を継ぐために、地元に戻るのだとか。プロポーズされて付いて行く事に決めたのだそうだ。
「本当は、ずっと東京に居たいんですけど、彼のお父さんが身体を壊されて。何かあってからじゃ遅いから。」