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陽炎ーカゲロウー
第2章 初夜
土間には水瓶があった。
ぴちゃり。
柄杓で水を掬うと、市九郎はぐびぐびと音を立てて飲んだ。
そして再び柄杓で水を掬い、板間に戻ってくる。
その柄杓を床に置くと、そのままどかりと床にあぐらをかいた。
こちらに背を向けてはいるが、音からして、刃物を研いでいるのだろうと思われた。
赤猫は、言われた通り衝立の裏にまわる。
裏には、簡素な夜具があった。
布団ですらない。縛った藁が畳一枚分ほと敷き詰められ、その上に薄い敷布と、薄衾があるだけの、本当に簡素なものだった。
それでも。
洞穴や木のウロ、社の床下など、雨風さえ凌げれば何処でも寝ていた赤猫にとっては、久々の人の寝床。
赤猫はふふ、と頰をほころばせ、
寝床に入り、薄衾を被って目を閉じる。
すぐに睡魔に襲われ、うつらうつらとしかけた、その時。
バサッと薄衾を引き剥がされ、赤猫は現実に引き戻された。
ぴちゃり。
柄杓で水を掬うと、市九郎はぐびぐびと音を立てて飲んだ。
そして再び柄杓で水を掬い、板間に戻ってくる。
その柄杓を床に置くと、そのままどかりと床にあぐらをかいた。
こちらに背を向けてはいるが、音からして、刃物を研いでいるのだろうと思われた。
赤猫は、言われた通り衝立の裏にまわる。
裏には、簡素な夜具があった。
布団ですらない。縛った藁が畳一枚分ほと敷き詰められ、その上に薄い敷布と、薄衾があるだけの、本当に簡素なものだった。
それでも。
洞穴や木のウロ、社の床下など、雨風さえ凌げれば何処でも寝ていた赤猫にとっては、久々の人の寝床。
赤猫はふふ、と頰をほころばせ、
寝床に入り、薄衾を被って目を閉じる。
すぐに睡魔に襲われ、うつらうつらとしかけた、その時。
バサッと薄衾を引き剥がされ、赤猫は現実に引き戻された。