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陽炎ーカゲロウー
第2章 初夜
そこに立っていたのは、市九郎。



すでに下帯一つ、という格好になっている。


市九郎は着物を着たまま横たわる赤猫を見下ろし、不機嫌そうに吐き捨てた。

「お前、なんでまだ服着てんだ?」

え?

きょとん、と市九郎を見上げる赤猫。


市九郎はイライラした様子で、


「先に入っとけっつったんだからよ、脱いどけよ!用意の悪ィ女だな、全く!」

…そう、なのか…?

怒られる意味がよく分からぬまま。


市九郎は赤猫の腕を引き、強引に起き上がらせると、着物の合わせを押し開き、無理矢理剥ぎ取った。

一瞬で、腰巻一つにされ、思わず胸をかき抱く。

すると、市九郎は奇妙な顔で、

「だから、んなガラ骨みてぇな身体隠したって意味ねぇっつってんだろうがよ」

と吐き捨てた。

そんなこと、言われても。

男の前にさあどうぞとさらけ出す勇気は持ち合わせていない。


市九郎は剥ぎ取った着物をぞんざいに衝立に引っ掛けると、あっという間に赤猫を組み敷いた。

一瞬の出来事に抵抗すら出来ず、赤猫はされるがままになっている。

ああ、そういうことか。

ようやく赤猫の頭が事態を理解する。あの三人と同じことを、しようとしているのだ。

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