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陽炎ーカゲロウー
第4章 過去
生きるため、若い娘が春をひさぐことはままあったが、
サチにはそれすらも許されなかった。

己で命を絶つ術も知らず、ただ、生きる為に盗む。

夜盗に身を落とすのも必然だった。


覆面で顔を隠し、人の寝静まった夜中に活動する。

見咎められたとき、覆面を外して素顔を見せるのも手口の一つ。

見た人間が必ず怯むからだ。


その間に逃げおおせたことも一度や二度ではない。


そのうちに、化物のような顔の赤猫が出る、という噂が立ち。


サチは、己の名を捨て、赤猫となった………
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