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陽炎ーカゲロウー
第5章 欲
気が抜けたと同時に、やはり、という気持と、悲しさが込み上げる。
「誰でもいいなら、それでいい…」
心は、良くない、と叫ぶ。
それでも。
それを言葉にする勇気がない。
そんな大それた望みを口にできるほどの、価値が己に見出せない。それ程に、彼女は虐げられて生きてきた。
「ンなこと言ってねぇだろうが。ツラなんかどうでもいいってのと、誰でもいいってのは違うだろ?」
市九郎はイライラした様子で、
「俺ァな、女の喜ぶ言葉考えるなんてな苦手なんだ。・・・ったく、どう言やいいんだよ」
舌打ちしながら、市九郎が困惑する様を、
赤猫は微笑ましく思った。
大きく溜め息を吐いた市九郎は、
ふと赤猫の頬に触れた。