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第10章 理由

翌日。

赤猫は非番と告げられ、一人家に居た。

昨夜、市九郎の腕の中で聞いた、もうじき、という言葉が今更ながらに気になる。

普段、市九郎は、そんな思わせぶりな態度は取らぬ男だから、さっぱり検討がつかなかった。

あの様子ではいずれ悪い話ではないのだろうが…

「市九郎、早く帰ってこないかな…」

いつも市九郎が刀を研ぐ部屋の片隅に座し、呟いた。