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陽炎ーカゲロウー
第10章 理由
「今日、市サン、何かおかしくなかった…?」
市九郎と八尋が仕事に出れば、家には鷺と兵衛だけが残される。幹部三人は各々長屋造りの、隣り合った家に住んでいたが、兵衛と鷺の家はお互い行き来しやすいように、隣同士の部屋が扉1枚でつながっている。八尋の家だけが建屋は繋がっているが、表から回らねばならない作りになっていた。
作戦は、鷺か兵衛、どちらかの家で立て、二人が仕事を終えて戻れば、また四人で成果の分配をする。仕事が終わるまでは、二人でいることもあれば、各々の部屋で一人で過ごすこともあった。
兵衛は萎えた脚で座したまま、いざって囲炉裏まで移動すると、茶筒を手に取り、茶を淹れ始めた。
こぽこぽ、と湯を注ぐ音がする。
二つの湯呑みに茶を淹れると、一つを鷺の前に置き、鷺の手を取って湯呑みの上に翳した。
指先に触れる湯気の熱。
「ここに、茶を置くでの。倒さぬようにせよ」
鷺に注意を促し、自らは湯気の立つ茶を啜る。
「なぜ、そう思う?」
「何となく。いつもよりも浮き足立ってるっていうか。なんか、らしくない気がしてさ。」
市九郎と八尋が仕事に出れば、家には鷺と兵衛だけが残される。幹部三人は各々長屋造りの、隣り合った家に住んでいたが、兵衛と鷺の家はお互い行き来しやすいように、隣同士の部屋が扉1枚でつながっている。八尋の家だけが建屋は繋がっているが、表から回らねばならない作りになっていた。
作戦は、鷺か兵衛、どちらかの家で立て、二人が仕事を終えて戻れば、また四人で成果の分配をする。仕事が終わるまでは、二人でいることもあれば、各々の部屋で一人で過ごすこともあった。
兵衛は萎えた脚で座したまま、いざって囲炉裏まで移動すると、茶筒を手に取り、茶を淹れ始めた。
こぽこぽ、と湯を注ぐ音がする。
二つの湯呑みに茶を淹れると、一つを鷺の前に置き、鷺の手を取って湯呑みの上に翳した。
指先に触れる湯気の熱。
「ここに、茶を置くでの。倒さぬようにせよ」
鷺に注意を促し、自らは湯気の立つ茶を啜る。
「なぜ、そう思う?」
「何となく。いつもよりも浮き足立ってるっていうか。なんか、らしくない気がしてさ。」