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陽炎ーカゲロウー
第10章 理由
「これはあくまで、俺の推測なんだけど、さ。市サン、足洗おうとしてんじゃないかな…」
「なんでそう思う?」
兵衛は腕を組み、眉を顰めた。
「…ここ一年くらい、急にデカいヤマ張るようになったと思わない…?」
「…まぁ、それが盗賊の本分と言えなくもない気がするがの。今までが欲がなさすぎたんじゃろ?」
「でもさ、考えてもみなよ。俺らが組んでもう十年だよ?これまでずっと慎重だったのに、なんでここに来て、って思わない?
普通はさ、無茶して痛い目見て慎重になる。けど、市サンは昔から、慎重すぎるくらい慎重な男だった。
それが、ここ一年ほど、箍が外れたような気がするんだよ。幸い、まだ足はついちゃいないけど、このまま行き
ゃ時間の問題だと思う。でもそれは、きっと市サンも解ってるはずなんだ。…てことは、市サンには終わりが見えてるってことじゃないかと思うんだよ。」
「…そう言われると、確かに。と、言うことはナニか?ここ最近の、多めの分配は、我らへの暇金、ということじゃったのか?」
「…そう考えると、腑に落ちる、ってだけだけどね。八尋はともかく、俺やお前は暇金でもなきゃこの先仕事も限られるし…」
「…しもうた、呑んでしもうたわ。」
「お前、ちょっと酒控えなよ。身体壊すよ?」
「そういうお前の方こそ、めくらのくせしてお盛んだそうじゃないか」
「うるさいよ。俺はまだ三十だからね、目が見えなくたって溜まるもんは溜まるんだ。枯れたジジィと一緒にしないでよ。」
二人はむぅ、と睨み合う。