この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
陽炎ーカゲロウー
第10章 理由
「…って今はそんな話じゃないだろ?お前がくだらないこと言うから話が逸れたじゃないか!」
「儂のせいか!?」
「とにかく。もし、この推測が当たってたら…今日のヤマはちょっと…ヤバいんじゃないかって気もするんだよね…」
表現できぬ苛立ちのままに、鷺は指先でコツコツと床を叩く。
「どの辺が?」
「うまく言えないんだけど。嫌な予感がするんだ。」
「ぬしの勘は当たるからの。」
兵衛は口をへの字に曲げ、鼻息を一つ吐いて茶を啜った。
「いつからだろう…猫ちゃんが来てから…じゃないな。仕事に加わるようになって…も、違う。やっぱり、去年の春あたりに何かがあったんだ…」
「何があったんじゃ?」
「そこまでは知らないよ。でも、去年の春…確かに市サンは変だった。悩んでるみたいで…」
「そうじゃったんか」
「その時は、ちょっとからかって済ませたけど、ちょうどあの後くらいからだった…」
「そういえば、分配が増えたがその頃だったか。そうじゃ、ちょうど桜の花の時節よ。いつもより上等の酒を呑んだわ、確かに。」
「何があったかは知らないけど、その頃、とにかく足を洗うことを考えるようなことがあったとしたら…」
「したら何じゃ?」